授業No.028
授 業:「いっぱいの命に守られて生きること。」
対 象:
多摩市立北豊ヶ丘小学校
日 時:2009年9月10日
28回目は多摩市立北豊ヶ丘小学校6年生の43名を対象にテキスタイルクリエーターの辛島綾氏(1996年本学染織デザイン専攻卒業)を講師にお迎えいたしました。
今回、2日間で、洋服や着物の製品の原料が、生き物から出来ている事を学びました。私たちは裸では成り立たない社会に暮らしています。寒さや日差しから守ってくれる服、私たちはいっぱいの「命」をいつも身に付け、守られて生きています。辛島先生からの命に対するメッセージは届いたでしょうか?
講 師辛島綾(テキスタイルクリエイター/1996年本学染織デザイン専攻卒業)

2009.9.10thu. 12:50 〜13:30
「染料作り」
 1日目は小学校の植物からとれる染料作りの準備を行ないました。植物を採集をするため小学校のグラウンドに集合しました。はじめに辛島先生からご挨拶がありました。
7班に分かれ、1班につき1種類の植物を採集しに出発です!(この時に、植物を染料にすることは子ども達には秘密で、明日の授業で使うということだけお話しました。)
北豊ケ丘小学校の地図を見ながら採集する植物の場所と、植物を目指すと目印のプレートを発見できます。

 

班ごとに45リットルのポリ袋いっぱいに植物を採集します。砂やホコリのついている葉はキレイに洗います。そして最後に、採集した葉を細かくハサミで切ってこの日の授業は終了です。

 

辛島先生は事前に打合せで来た小学校の緑の豊かさに驚き、植物の命から色をもらう植物染料を行なう事になりました。小学校を歩き回り、優秀な染料といわれているドウダンツツジ、上手く染まるか分からないものの子ども達にも親しみのあるソメイヨシノとカキ、学校樹であるユリノキなど、7種類の植物が決まりました。子ども達が採集した小学校の植物はどんな色になるのでしょうか?









2009.9.11fri. 8:40 〜9:25
「辛島先生のお話」
 「布を作る仕事について」「布は何からできてるか?絹、麻、綿、毛の説明」「なぜ染織の道を選んだのか?」と、辛島先生から布や先生のお仕事のお話がありました。そして辛島先生が、染織を選ぶきっかけとなった、国語の教科書より「一色一生」の朗読を聞きました。

辛島先生は、「子ども達の手で触れて実感してもらいたい」と綿花の鉢や羊毛、着物一反分の2600個の繭、絹、麻、綿、毛など服の素材である実物を用意いただきました。その素材から作った辛島先生の作品も展示し、大学の卒業制作である植物染料で絹糸を染め、織った着物も持参いただきました。

9:30 〜10:15
「植物染料づくり」
 前日に子ども達が採集した植物で染料を つくり、繭を染めます。はさみで細かくした植物をずんどう鍋で煮ます。紗とザルで漉し植物染料の完成です。完成した染料に1人2頭の玉繭を鍋の中へ入れしばらく浸けておきます。玉繭を浸けている間に、子ども達がこの日のために育ててきた蚕の繭から糸を引きました。1人1頭を箱から丁寧に手で取り出し、繭のまわりについている繭毛羽をとります。先生がみんなの繭を鍋で煮るにあたって
「もらった命を身につけているからにはそのもらった命の分、生きよう。」
というお話がありました。煮上がった繭を1人1頭配り、生糸を引きました。






13:30 〜15:05
「制作・まとめ」
 引き続き制作を行った後、辛島先生が子どもたちの作品を順番に見ていきました。そして1人1人にコメントをしました。材料作りから作品の完成まで、2日間にわたって行なわれた今回の授業ですが「命」の大切さに対する独自の視点を通して理解してもらい、そして楽しく制作を行い充実した授業となりました。




 
出前アート大学を終えて
講師 辛島 綾(テキスタイルクリエイター/1996年本学染織デザイン専攻卒業)

この授業内容を提案した時、何故この内容なのか?と何人にも尋ねられました。それは私にとっては特別な事ではなく、いつも感じていること。
素材には命がある。それらに守られて人は生きている。その事を伝えたい。どうしたら・・・どうしたら・・・・・とかなり試行錯誤をしたものの
予想以上に伝わったみたい・・・・嬉しいですね。授業の感想アンケートに書かれた言葉は、子供ではなくひとりの人間として、立派過ぎるくらい・・・
こんな世の中と言われるけど、未来は輝いている。そう思う事が出来ました。
そして、その未来の為に私にも出来る事がある。そう思える経験をさせて頂きました。